空撮写真でわかるように、海側から見ると浦奥の先にどーんと浅茅山(あさじやま)が控えている。あの『万葉集』にも載っている、古からの名山だ。古人も思ったのではないだろうか。なんと美しい浦ではないか、と。
ただし、「犬吠」の文字が歴史に初めて登場するは、1700年(元禄13年)の『郷村帳』だ。そこには、戸数7戸、人口26人とある。最も小さい村の一つだ。(特殊事情の豊崎郷・津和原2戸を除く)
1809年(文化6年)に発刊された『津島紀事』に、「ある説にいう。この里は東目のかすかなる所にして山の上および船路よりも見えず。たまたま犬の吠ゆる声を聞きて人家の在る事を知り尋ね行きて見るに里の名もなきゆえ犬吠と名づく」とある。その地名の起源をやはり「犬」に求めているが、どうだろう。
※かつての「浅茅山」は、現在「大山岳」と呼ばれている。