赤島周辺には2カ所、製塩所がある。もちろんどちらも天然塩だ。1カ所は対馬の名産品として、ふるさと納税の返礼品にも選ばれている「藻塩」だ。返礼品の説明には次のように書かれている。
「対馬の中でも特に美しく、透明度の高い場所の海水を汲み上げて、海水と対馬で作られたひじきを一緒に炊き込み、職人が30時間かけて手作業で仕上げた天然塩です。」また、別の所には「海水をくみ上げて職人仕事で約2日かけて完成させた藻塩。職人権藤光男がくみ上げる海水は早朝のとびきり綺麗な日のみ。」と。
もう一方の塩は、現代版流下式塩田ともいえるもので、「天日塩」だ。くみ上げた海水を、逆浸透膜を利用した1次濃縮装置を通し、次はネットを利用した2次濃縮装置で自然の風や太陽光の熱で水分を蒸発させ、塩分濃度を高めていく。2次濃縮の工程を繰り返して、濃い塩水(鹹水)をつくり、今度はそれを温室で自然乾燥させる。こちらはポンプ以外は100%自然エネルギーだ。
天候に左右され、生産も安定せず、時間もかかるし、生産量も少ない。その分コストもかかる。しかし、この塩でなければ、と買い求めてくる九州の味噌や醤油造りの老舗、会員制の顧客などの期待に応えるために、このスタイルの製塩にこだわっている。
ここで塩づくりを始めた橋本さんは福岡出身で、1999年に対馬に移住した。ここの海水がきれいで、そのくせプランクトンが豊富で藻の生育がよく、ミネラル分が多い。それがここを選んだ理由とのことだった。