安神のもっとも重要な年間行事が、嶽の神祭りだ。祭日は旧暦の11月16 日で隔年開催となっている。対馬では、山の神、 嶽の神は各地にあるが、安神の嶽の神祭りは神話的な趣きをたたえており、保存が期待されている。
祭事を執り行う者は神官+7名で、7名は当日未明に海に入って禊ぎをし、鹿の革の羽織を着用。神官と3名のみ、御幣(ごへい)、赤飯、御供米(おくま)、酒を持って神山に登り、山頂で神主が祝詞をあげてから供えた酒と赤飯をいただく。他の4名は中腹で、米1升、水1升でご飯を炊き、鰤(ぶり)を串刺しにして待ち、山頂組と落ち合ってから、鰤とご飯を食す。全員が下ってくると、川原で待っていた男たちとともに鍋で煮たものと酒で共食し、祭りは終了となる。
嶽の神祭りがいつから始まったかは定かではない。作法が整ったのは中世のようだが、さらに古い時代を感じさせる何かがあるようだ。
なお、村には木根神社(きのもとじんじゃ)という、藩主宗義真が社殿を造営したと伝えられる神社もあるが、「嶽の神」の祭神は別神だ。