対馬全カタログ「食」
観光    特産品  歴史  社寺  生き物
村落  民俗・暮らし  アウトドア  キーワード
2021年2月24日更新
ろくべえ
i
この味はクセになる。
ネットでも手軽に買える
対馬の伝統郷土料理
一度美味しいと感じたら、もうヤバイ
 他ではなかなか出会えない、対馬ならではの食べもの、「ろくべえ」。特に名前の由来としての記録がないところからみると、おそらく後述する島原市の「六兵衛」に似ていることから、「ろくべえ」と呼ばれるようになったのではないだろうか。製造工程は違うものの、どちらも麺料理で、その原料も同じだ。
 麺の太さはうどんと同等かそれよりも太く、色は田舎そばをさらに濃くした焦茶色で、麺の長さは短く、表面はツルツル、食感はプルプル、といった感じだ。箸でつかむのは難しいので、ほとんどの人がレンゲやスプーンでいただいている。
 島原出身の人が、“島原の六兵衛”をイメージして通販で購入し食したところ、「さすがに昔ながらの芋100%のボソボソ感はなかった」そうだが、対馬の「ろくべえ」は、昔からボソボソ感はなかった。それは製造工程の違いによるものだろう。
原料はサツマイモ!(ろくべえの作り方)
 黒っぽい「ろくべえ」を見てから、その原料をサツマイモと告げると、驚く人も多い。しかし、芋から「ろくべえ」に至る工程やそれにかかる時間を知ると、さらに驚くのではないだろうか。
 サツマイモをスライスして天日干し→乾燥したものを砕いて粉状にし→それを何度も水につけてアクを抜いてから→沈殿したものを2カ月かけて発酵させ→それを1カ月かけて乾燥させ→さらに水につけてアク抜き→乾燥させ→それを砕いて→水の中でもみ→沈殿したものを漉して滓を取りのぞき→乾燥させて柔らかい内に“鼻高ダンゴ”の形に成形し→乾燥させて「せんだんご」をつくる。これで準備完了となる。
 「ろくべえ」は、この「せんだんご」に水を加えて粘土状にし、それを穴の開いたおろし金のような「せんせぎ」と呼ばれる道具で押し出して麺状にしたものだ。
島原の六兵衛とは確かに似ているが
 実は長崎県島原市にも、見た目が似た「六兵衛」と呼ばれる料理がある。島原の「六兵衛」は、深江村の名主の六兵衛が、1792年に起こった火山性地震に起因する「島原大変」という天災後に、食糧危機を乗り切るために考案したと言われている。どちらもサツマイモを利用した料理だが、作り方が少し違う。
 島原の「六兵衛」は、サツマイモを薄く切って乾燥させ、それを粉末にした「せん」に山芋を入れ、熱湯でこねて、うどん状にしたもので、「六兵衛うどん」とも呼ばれるらしい。
 それに比べると、対馬の「ろくべえ」は発酵という、手間と時間(2カ月)のかかる工程を踏まなければならない。その製法の差は、味や見た目、食感にも、わずかだが違いを生んでいる。
対馬で「ろくべえ」を食べるには
 「ろくべえ」は郷土料理としては比較的安く食することができ、値段は「対州そば」とほぼ同等。そばが食べられる店ではほとんどのところで注文できる。店によって太さやダシが違っていたりするので、食べ比べるのもいいかも知れない。品切れすることもあるので、あらかじめ電話で確認した方が確実かも知れない。
 対馬のほとんどのスーパーには冷凍の「ろくべえ」が置いてあり、ダシも付いている。コンロと鍋さえあれば、例えばキャンプをしていても、調理時間5分ほどの簡単調理で、美味しくいただくことができる。
 因みに、ダシは鶏・椎茸ベースで、椎茸やワカメ、カマボコ、ネギをトッピングすることが多いようだ。
スーパーサイキで購入した『対馬六兵衛』
通販、そして「ふるさと納税」でも
 対馬の伝統食もインターネットで気軽に注文できる時代になった。ブラウザで「対馬 ろくべえ 通販」で検索すると、通販サイトが何件がヒットするので、価格や送料等を比較検討のうえ求めてほしい。
 また、対馬市への「ふるさと納税」の返礼品としても設定されているので、そちらで求めるのもいいかも知れない。1万円で『対馬六兵衛』6袋、2万円で12袋だ。
対馬市への寄付もできて一石二鳥。ぜひ対馬の田舎の味を食してみてほしい。
Ⓒ対馬全カタログ