対馬全カタログ「観光」
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2022年1月30日更新
塔ノ鼻
【とうのはな】
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かつて何があったのか。
江戸初期には存在していた
石積みの塔にミステリー
岬の先端に石積みの塔、地名も塔ノ鼻
 明治期の村移り(村ごと引っ越し)で知られる五根緒地区から南東800mほどのところに、大海原に向かって4基の石積みの塔が並んだ岬がある。「塔の鼻」あるいは「塔ノ崎」と呼ばれているが、塔の発生年代は明らかではない。
 元禄時代の地図に「トウノサキ(塔ノ崎)」と表記されているので、塔はそれ以前からあったと思われ、しかも地名になるくらいだから、元禄時代よりもかなり前からあったと推察される。
遠くから眺めると、周囲の岩の色にまぎれ、それほど目立たないことに気付く
信仰なのか、祈りなのか
 4基の内訳は、最も大きい塔が高さ2m、次のが1.8m、そして高さ1mのが2基。大きい2基は比較的新しく、おそらく村移り後に、元五根緒にあった天道の塔が移築されたのではないかとも言われている。(元五根緒の西には天道山がある。)古い2基も、新しい塔と同様に天道祭祀の塔ではないかという説もあるが、果たしてどうだろうか。
 石を積み上げるという行為自体が素朴な行為だけに、単に誰かの無事を祈ってのことかも知れないし、いろいろ想像できる。最初に塔を積んだのがどのような人たちで、どのような状況で行ったのか、近世初期に付近に村があったという史料もないので、依然ミステリーのままだ。
石積みの塔は4基:稀に増えている時がある
上(2003年)と下(2021年)を見比べると、最も海に近い塔(左から2番目)が低くなり、上部が積み直されていることに気付く
すぐ近くに赤い祠の曽祢崎神社
 塔の鼻の丘の上には曽祢崎神社が鎮座している。これは元五根緒にあった神社を、村移りの時に現在の地に遷したものだそうだ。小さな赤い祠があり、海と祠の間に鳥居が立ち参道を形成している。
 祭神は、五根緒地区の氏神でである曽根山房。「曽根山房」とはヤブサ神らしく、江戸時代の一時期、九州地方で広まった信仰だ。
 石積みの塔と氏神様がある塔の鼻は、五根緒地区の神域ということだろう。年月を経て存在し続けるものが醸し出す“神さびた”雰囲気があり、不思議スポットとして訪れる人が増えている。
塔の鼻全景:右の方に曽祢崎神社の鳥居と祠の屋根が見える
この鳥居には「曽根崎神社」と書いてある
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