2021年4月6日更新
全写真:川口誠氏
ヤマショウビン
【ブッポウソウ目・カワセミ科】
一度はこの目で見たい!
その鮮やかな5色の旅鳥は
毎年5月にやってくる
ヤマショウビンの「ショウビン」は
「カワセミ」のこと
ヤマショウビンは漢字で「山翡翠」と書く。「翡翠」はカワセミとも読み、さらには宝石のヒスイの漢字表記でもある。順序としてはカワセミが先で、宝石のヒスイは、カワセミの羽の色に似ていることに由来して「翡翠」となったそうだ。
「山翡翠」とは、つまり“山のカワセミ”ということになるが、確かに水辺に棲んで小魚を餌とするカワセミとは違い、森に棲み、カニ、カエル、トカゲ、ムカデなどの小動物を捕食する。なるほど、山のカワセミ=ヤマショウビンというわけだ。ただし、対馬ではカニを狙ったヤマショウビンがで川や沼の岸で多く観察されるそうだ。
ちなみに学名は、Halcyon pileata。「Halcyon」はヤマショウビンの仲間全般「ヤマショウビン属」のことだ。
ムカデを加え電線にとまるヤマショウビン
日本で「ヤマショウビン」といえば、対馬
ヤマショウビンは、中国東部や朝鮮半島で繁殖し、冬季は東南アジアへの渡りをおこない越冬する。越冬地から繁殖地に戻る時に南西諸島を経由し、対馬で羽根を休め、そして朝鮮海峡を越えていく。こういう鳥を旅鳥というらしいが、こちらはあえて言えば北方グループ。インドの沿岸部やスリランカ、ボルネオ島、スマトラ島には、1年中そこで生息する南方グループもいるという。
日本では主に対馬、隠岐など日本海側の島に、特に春に旅鳥として渡来する。南西諸島でもよく観察されているらしいが、野鳥ファンの間でもヤマショウビン観察地といえば、対馬ということになっている。
水辺の木の枝や杭、電線などに止まり、餌を探す
素晴らしいデザインも人気の一因
体長は30cmほどで、ハトよりすこし小さいが、カワセミよりはずいぶん大きい。くちばしと足は赤く、頭と目は黒い。英名は「 black-capped kingfisher」だが、その名の通り頭に黒い帽子をかぶったようなkingfisher=カワセミだ。
首と胸は白く、腹はうすい黄褐色で、翼の芯は黒く、翼のふちと背中は美しい紺色、あるいは瑠璃色となっている。これらの配色が派手でありながらバランスが絶妙と、そのデザイン性に評価が高い。
かわいいが目は鋭い
飛ぶ姿も美しい
1メートルの巣穴に産室があり、
そこにカニの甲羅などを敷く
対馬を旅する北方グループの、繁殖地は朝鮮半島や中国東部。産卵期は5月~6月で、白色無斑の卵を4~6個生むそうだ。崖や土手に穴を掘って営巣するが、1mに達する穴を掘ることもあるという。さらにシロアリのアリ塚に巣穴を掘ったり、樹洞を利用した例もあるらしい。産室にはカエルの骨やカニの甲羅を敷くそうだが、産室があるというのにも驚く。
長いくちばしは、餌を捕らえるときは餌をすくうスプーンや挟むトングの役割もし、穴を掘る際にはスコップの役割もするということだ。
いつもの鳴き声は短く、チッチッと聞こえるが、繁殖期にはキョロ、キョロと鳴くそうだ。
大きなくちばしは多用途だ
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