対馬全カタログ「生き物」
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2021年3月22日更新
写真提供:対馬野生生物保護センター
ツシマテン
【食肉目・イタチ科】
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国の天然記念物、準絶滅危惧種に
指定されるも個体数は維持。
町中にも現れる、対馬の愛嬌者
九州と陸続き時代に対馬に来た
 テン(ホンドテン)は本州や四国、九州にもいるが、ツシマテンは対馬にしかいない亜種で、学術上貴重であるとして、1971(昭和46)年6月28日に国の天然記念物に指定された。
 体形は胴長短足で、頭胴長が40~48cm、尻尾の長さは17~19cm、体重が1.1~1.5kgになり、体毛は季節変化をする。夏毛は背と体側が黒褐色で腹部は黄褐色になるが、冬毛は口元と鼻の黒色部分を残して頭部が灰白色に、喉から胸にかけては黄色っぽく、残りの体全体が黄褐色になる。頭部が白くなることから、対馬では「ワタボウシカブリ」とも呼ばれる。
 朝鮮半島に住むコウライキテンは、冬、全身が黄色くなり、朝鮮半島に近い対馬だが、ツシマテンとコウライキテンは、体毛の色に関しては似ていない。DNA分析でも、ツシマテンはホンドテンの亜種であり、対馬が九州から離れた際に対馬に孤立してしまった集団の子孫ということになるらしい。
植物食の多い食肉目
 ツシマテンは対馬全域の、主に森林に生息しているが、集落周辺に出てきてニワトリを捕食することもあるという。
 対馬の三大肉食獣の一つだが、ツシマヤマネコやチョウセンイタチに比べると、植物食の割合が多いそうだ。フンの内容物の分析によると、昆虫が増える夏は植物4割、昆虫4割、その他2割だが、実りの秋は植物6割、春と冬は植物5割となる。
 エサとなる植物は、ヤマグワやマタタビ イヌビワ、クサイチゴ、グミなどの果実が多く、特に冬場は柿を好むらしい。一方動物では、ネズミ類や小鳥類、両生類や爬虫類などの小型脊椎動物、昆虫類、ムカデを始めとする土壌生物などが食される。
厳原市街のブロック塀の上を移動するツシマテン
写真:鍵本妙子氏
木登り上手で愛嬌者
 ツシマテンは夜行性で、ほとんど単独で行動する。行動圏はオスメスともに、0.5~1.0k㎡。同性間での重複は少なく、縄張りがあると考えられている。交尾は夏に行われるが、受精卵の着床遅延があるので出産は翌年春になる。4~5月に1~2頭を樹洞などで出産する。
 歯の数は全部で38本。鋭く大きな犬歯ととがった裂肉歯は、小型哺乳類や鳥類などの獲物を捕らえて肉をかみ切ることに適している。
 ツシマテンの前足は太くがっちりしていて、木登りが得意。足の幅は広く、裏には柔らかい肉球がある。前足の肉球は小さく分かれていて、ものをしっかりつかんだり、小枝にぶら下がったりするのに適している。指は前後とも5本で、鋭いかぎ爪をいかして崖や木の幹を垂直に走り登りる。
 ツシマテンの決めポーズ、二本足で立ち前足をお腹のあたりで揃えたポーズは人間っぽく、リスのいない対馬では自然界の愛嬌者的な存在でもある。
個体数減少の懸念
 同じ国指定の天然記念物でも、ツシマヤマネコに比べると個体数も多く、島内どこでも遭遇することができる(いつでも、という訳ではない)。人家の屋根裏に入り込んだりするので、厄介者扱いされる事も多いようだ。
 国の天然記念物なので捕獲禁止措置がとられていることもあり、現在のところツシマテンの明確な個体数減少は確認されていないそうだ。雑食性が功を奏しているのかも知れない。しかし、シカの食害や開発による良好な広葉樹林の減少、交通事故による死亡、野犬や猟犬による捕殺など、懸念要因は多く、環境省の第4次レッドリストにおいて準絶滅危惧種に指定されている。
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