対馬全カタログ「生き物」
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2021年4月8日更新
全写真:川口誠氏
シベリアイタチ
【 食肉目・イタチ科 】
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シベリアイタチなのに
対馬の在来種。
ついにレッドリスト入り
2020年、ついに絶滅危惧種に
 2020年3月27日、環境省は絶滅の恐れがある野生生物をまとめたレッドリストに、絶滅危惧種として「対馬に生息するシベリアイタチ」を加えた。
 シベリアイタチは東アジアに広く分布し、世界的には絶滅の恐れはないが、日本で自然分布するのは対馬のみ。既に将来的に絶滅危惧種になる可能性がある「準絶滅危惧種」に指定されていた。
 ところが、最近対馬で問題視されているツシマジカの増加により、生息環境が悪化し、近年、急激に個体数が減少していることが、自動撮影や糞などの調査で判明。そこで環境省は、近い将来野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧1B類」にランクを引き上げ、レッドリスト入りとなった。哺乳類の絶滅危惧種への指定は8年ぶりだそうだ。
本土のシベリアイタチは外来種で、勢力拡大
 シベリアイタチをインターネットで調べると、「チョウセンイタチ」として国立環境研究所の侵入生物データベースに載っていた。
 移入元は「朝鮮半島」で、「毛皮獣として導入されたものが放逐。また、宮崎県延岡市サギ島と長崎県松浦市青島では、ドブネズミ駆除のため放逐」。さらに「1930年頃に兵庫県尼崎市・明石市で、昭和初期に福岡県で、放獣された。戦後の混乱期に、船荷などに紛れて北九州に持ち込まれたという説もある。九州での分布拡大は戦後に起きている」とある。
 多くは毛皮業者が養殖のために持ち込んだもので、その後養殖場から逃げ出して野生化し、本州西部(東は愛知、岐阜、福井)、四国、九州全土に勢力を拡大。在来種であるニホンイタチに比べて体が一回り大きいこともあり、徐々に勢力を拡大。ニホンイタチを山間部に追いやっているそうだ。
 本土のシベリアイタチ=チョウセンイタチは、日本の侵略的外来種ワースト100に入っており、オスは狩猟獣として捕獲対象となっている。

国立環境研究所の侵入生物データベース「チョウセンイタチ」
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10180.html
対馬在来種、本土外来種の系統の違い
  ミトコンドリアDNAの分子系統推定では、シベリアイタチとニホンイタチは、240万~170万年前に分岐したと推定されており、ニホンイタチとはかなり遠い親戚ということになるそうだ。
 西日本の移入された外来種シベリアイタチは、韓国のシベリアイタチ=チョウセンイタチに由来すると考えられているが、移入元が朝鮮半島だから間違いないだろう。
 2017年に発表されたミトコンドリアDNAによる分子系統推定では、対馬の在来種シベリアイタチは、ロシアのシベリアイタチと近く、中国・台湾・朝鮮半島・本土外来種の系統とはその上でつながるそうだ。
 そうなると、対馬のシベリアイタチは、いつ頃どういうルートで対馬に来たのか、気になるところだが、ツシマヤマネコと同様、氷河期が終わり、朝鮮海峡が広がることで対馬に取り残されたシベリアイタチたちがいた、ということだろう。
生息環境の好転は、ツシマジカ次第?
 シベリアイタチは、落葉樹や針葉樹からなる自然林や、草原、渓谷などさまざまな環境に生息し、水辺の藪などで被われた環境を好む。夜行性で、木に登り、水中を泳ぐこともできる。倒木や切株・茂みなどを、巣やねぐらとして用いる。市街地で道を横断する姿も目撃されている。
 肉食メインの雑食性で、対馬での218個の糞の内容物調査では、35%にネズミなどの小型哺乳類、20%に昆虫、13%に漿果(柔らかな果肉の果実)および種子、10%にそれぞれ鳥類と他の植物質、7%にミミズ、5%に爬虫類と両生類が検出されたそうだ。
 前述のように、ツシマジカの増え過ぎによる環境悪化で生息場所や餌が減り、対馬在来種シベリアイタチは絶滅危惧種に追いやられている。やはり鹿による環境破壊を食い止めることが、対馬喫緊の課題のようだ。
ツシマテンに比べると、出会う機会が少なくなったシベリアイタチ
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