対馬全カタログ「生き物」
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2021年4月8日更新
写真:國分英俊氏
ゲンカイツツジ
【 ツツジ科・ツツジ属 】
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玄界灘を中心にぐるっと分布。
対馬は最大の群生地で
よって対馬市の「市の花」に
対馬では、桜に匹敵する春の花
 対馬を彩る春の花といえば、もちろん桜もきれいだが、景色としては断然ゲンカイツツジだ。浅茅湾の渡海船が定期便として活躍していた頃は、渡海船から眺める海岸の岩場に咲くゲンカイツツジは春の定番風景だった。しかし、渡海船の利用が減り、定期運行が減り、漁師以外がその景色を楽しむ機会は少なくなった。
 ゲンカイツツジが咲くのは、岡山県以西の本州、九州北部、対馬、朝鮮半島南部、済州島。壱岐と福岡の真ん中あたりにコンパスの中心を置き、ぐるーっと円を描いて、それに広島県と岡山県を加えれば、だいたいそれが分布エリアとなる。その円の中心が玄界灘だから、ゲンカイツツジというらしい。
岩場に咲くゲンカイツツジ     写真:國分英俊氏
珍しい、海際に咲くゲンカイツツジ
 日本では対馬の群生が最大規模で、通常は山に咲く花だが、波をかぶるような海岸の岩場に咲くのは対馬ならではとか。対馬では北部に多く、南部に行くほど少なくなるが、その間の浅茅湾(あそうわん)が最大の名所。毎年、シーカヤックのゲンカイツツジ花見ツアーも企画される。
 ゲンカイツツジの花期は3~4月上旬。花の色は、基本は桃色か白色だが、白から赤まで変化に富み、まれに赤色のものも発見されるそうだ。
 落葉低木で、高さは1~3m。学名は、Rhododendron mucronulatum var. ciliatumで、分類は、ツツジ科ツツジ属ヒカゲツツジ亜属有鱗シャクナゲ節ゲンカイツツジとなる。
写真提供:長崎県立豊玉高等学校
ゲンカイツツジを未来に遺すために
 そのゲンカイツツジが、いつの頃からか減ってきているという。原因は、林業衰退によって山の手入れが行き届かなくなり自生地に陽が当たらなくなったこと。そしてシカやイノシシの獣害も考えられるそうだ。
 そのことに危機感をもった島内外の有志が2002年(平成15年)に立ち上げたのが、ボランティアグループ「玄海つつじの森つくろう会」。会員が自宅で種から育て、毎年2000本~2500本の苗木を持ち寄って、美津島町のあそうベイパーク内の山5ヘクタールに植樹している。ゲンカイツツジをメインに コバノミツバツツジ、チョウセンヤマツツジなども植え、長い期間ツツジを楽しめるように工夫しているそうだ。現在2万7000本のツツジが春になると花を咲かせ、多くの人が花見に訪れるという。
 ゲンカイツツジが対馬市の「市の花」に認定されたのは、その活動開始から2年後。ゲンカイツツジを守ろうとする市民の意識も、さらに高まったに違いない。
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