対馬全カタログ「生き物」
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2021年4月1日更新
全写真:國分英俊氏
ダンギク
【シソ科・ダンギク属】
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道路わきに咲く紫の花。
ダンギクは
対馬の秋を代表する花だ
この形、この色。一度覚えると忘れない花
 ダンギクは、海に近い日当たりのよい岩山の崖や、急斜面、道路わきの草地に咲くに多年草。開花期は9月~10月で、高さは30~60cm。全体に柔らかい毛があり、茎はまっすぐに伸び、茎の上部の葉のつけ根に花が密集して咲いている。
 冬になると根元を残して枯れ、翌春、根元や茎の残った部分から芽を出して成長を再開する。
 乾燥と強光線には強い反面、やや耐寒性に欠けるといわれ、寒冷地では寒さで枯れてしまうこともあるという。
 茶室に生ける茶花として使われることも多く、中国では漢方薬としても重宝されている。また、江戸時代の園芸書『花壇綱目』(1681年)に記載されており、その頃から園芸用として栽培されていたようだ。
 自生地は、日本、朝鮮半島、中国、台湾などで、日本では対馬と九州西部海岸の日当たりのよい岩場や草地などに自生している。
道路わきの草むらにも咲いている(写真:日高)
下から上の段に順々に咲くのでダンギク
 茎が長く伸び、上下に間隔を開けた葉のつけ根の部分から小さな紫の花が上に向かって集まり花穂をつくっている。これを「穂状花序(すいじょうかじょ)」という。その花序が何段にも重なって、下から上の段に順々に咲くのでダンギク(段菊)。ただし、キクの仲間ではない。
 花には芳香があり、一つひとつの花は唇形をしているらしい。4本の雄しべと1本の花柱(雌しべ)が花筒からまっすぐに突き出ており、花の色は紫が多いが、白やピンクのものもあるという。
 茎は直立し、葉とともに短い軟毛を密生して、灰色がかって見える。葉は卵形で、向かい合って生える対生。葉の先は尖り、縁には粗いぎざぎざがあって、そこが少しキクに似ている。
下の2段は花が開き、上の4段は蕾の状態
分類体系が変わり、クマツヅラ科からシソ科へ
 1980年代に主流の、マクロ形態的かつ演繹的なクロンキスト体系ではクマツヅラ科に属していた。しかしゲノム解析が普及すると、それをもとにしたAPG植物分類体系が主流となり、多くの属がシソ科に移行した。その中にカリガネソウ属もあり、さらにカリガネソウ属をカリガネソウ属とダンギク属に分ける分類もある。
 つまり、ダンギクの分類として、少し古いがクロンキスト体系分類の【クマツヅラ科カリガネソウ属】と、APG分類体系の【シソ科カリガネソウ属】と【シソ科ダンギク属】があるということだ。ここではネットで最もよく使われている【シソ科ダンギク属】を採用している。
 ちなみに学名は、「Caryopteris incana」だ。「Caryopteris(カリオプテリス)」は、ギリシャ語で「胡桃」「堅果」を意味する言葉と「翼」を意味する言葉を組み合わせたもの。果実に翼が生えているように見えるところから名付けられたらしい。 種名の「incana」は、「灰白色の、灰白の柔毛で覆われた」を意味するという。
見事に咲きそろったCaryopteris incana(ダンギク)
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